株式会社リコー DX本部 ワークフロー革新センター プロセスDX開発室 室長 塩谷晴久氏 (左)
株式会社リコー DX本部 本部長 兼 ワークフロー革新センター 所長 浅香孝司氏 (中左)
株式会社リコー DX本部 ワークフロー革新センター プロセスDX開発室 DevOpsグループ 飯田浩一氏 (中右)
株式会社リコー DX本部 ワークフロー革新センター プロセスDX開発室 副室長 兼 DevOpsグループ リーダー 荒井裕司氏 (右)
※2026年4月1日時点、記事の内容は2026年3月上旬の取材時時点の情報です。

 
創業以来、事業を通じてお客様の“はたらく”の変革を支えてきた株式会社リコーでは、デジタルを活用した業務改善・プロセス改革をプロセスDXと名付け、実践に基づくノウハウをもとに社内業務のDXを進めてきています。現場の困りごとは現場で解決するために、利活用強化を組織の方針の一つに掲げる同社は、プロセスを可視化し、最適化し、データを活用して継続的に改善していくための手段として、WalkMeを採用。段階的にWalkMeを適用するシステムを拡大し、着々と成果を生み出しつつある。

100%からの引き算でなく足し算のIT組織へ変革

リコーは、1977年、業界に先駆けてOA(オフィス・オートメーション)を提唱して以来、複写機・複合機などのオフィスプリンティングを中核に、お客様の“はたらく”に寄り添ってきた。同社の使命は、“はたらく”に寄り添い変革を起こし続けることで、人ならではの創造力の発揮を支え、持続可能な未来の社会をつくること。2023年に新たに制定した企業理念の使命と目指す姿「“はたらく”に歓びを」には、そんな想いが込められている。

同社が、業務効率化やIT導入そのものを目的とするのではなく、働き方そのものを変える風土改革の一環として「プロセス変革」に取り組む理由もここにある。「そもそも不要なプロセスに対してデジタルを実装しても意味がありません。デジタル化ありきではなく、最初に何をやりたいかがあり、その上でプロセスがどうあるべきかを問うべきなのです。だから我々は、プロセス変革への取り組みをDXではなく、『プロセスDX』と呼んでいます」と語る浅香氏は、DX本部本部長として、プロセスDXをリードしている。

同社のプロセスDXの特長は、現場主導であること。「困っているのは現場であり、現場のことをわかっているのも現場、改善のアイデアがあるのも現場だからです。現場が自ら課題を見つけ、改善策を考え、実装までを担えるように、DX本部内のCoEがガバナンスや人材育成の面で伴走支援する体制を取っています」と浅香氏。

ITシステムを構築し、現場が使えるようにして初めてシステムは価値を生むものになる。したがって、単なるシステムの安定稼働にとどまらず、利活用を継続的に強化することで、さらなる運用効率の向上やITコストの削減といった成果につなげていくこと。これがDX本部の目指すところだ。そこには、「計画通りにQCDを守るのが当たり前で、問題が発生すれば減点される」という、“引き算”で評価されてきたIT組織を、利活用強化の取り組みを通して現場の満足度につなげ、“足し算”で価値を生み出す組織へと変えていく狙いもある。

現場の困りごとは現場で解決する自律的なプロセスDXを推進

現場の困りごとを現場が解決する自律的なプロセスDXを効果的に進めていくためには、業務の可視化、最適化が不可欠であり、最適化したプロセスに対してデジタル技術を適用し、そこから得られたデータを利活用して改善サイクルを回す仕組みが必要になる。こうした利活用強化の仕組みを実現するためのツールとして、同社が着目したのがWalkMeだった。最初に「何を解決したいか」を明確にし、課題を解決するためのWalkMeコンテンツをリリースし、十分な改善効果が見られなければ、コンテンツを見直して次の改善につなげていくことができる。すでに複数のシステムでWalkMeの活用が進んでいた同社では、ユーザー部門の評価も高く、ちょうど全社展開を検討しているタイミングでもあった。

WalkMeの導入は、経理・人事などの現業部門、ITシステムを担当する保守運用チームとITインフラチーム、DX推進をリードするCoEが連携し、三位一体となって取り組んでいる。しかし、いざ全社展開を進めようとすると、想定以上に課題が多いことが判明。
「コンテンツ開発の進め方やルールが決まっておらず、システムごとにバラバラで、ナレッジも蓄積されていなかったため、担当者が変わった時の引継ぎも難しいような状態でした」と荒井氏。そこでまずは、CoEメンバーが中心となり、WalkMe開発に対する要件定義の考え方や開発ドキュメントの標準化など、土台を整備することから着手。同時に、ITインフラチームと連携し、WalkMeを使うために必要なブラウザ拡張機能の配布方法や、ユーザー認証の仕組みなど、インフラ面での利用環境も整えていった。

また、ユーザー規模を拡大するにあたり、導入を検討している部門がWalkMeを気軽に試せるように、WalkMeをトライアル利用するための環境を用意。各部門が積極的に手を挙げやすくし、そこにCoEの伴走支援を組み合わせることで、スムーズかつ継続性のある展開につなげられるようにした。こうして「やる場(環境)」「やる気」「やる腕(スキル)」の3つの観点から全員参加型のプロセスDXを推進していくのが、CoEの役割でもある。

CoEが現場に徹底して寄り添いWalkMe活用を啓蒙・展開中

展開の土台づくりに注力した2025年を経て、WalkMeを適用するシステムを段階的に拡大してきた同社は、2026年1月時点で9システムへの実装を完了。グループでのWalkMeのユーザーは、早くも35,000人規模に及ぶ。昨今は、基幹システムへのSaaSパッケージの導入が増えていることもあり、パッケージシステムそのものに手を加えることなく、自社の業務プロセスに対応できるWalkMeは、システムの利活用強化を進める上で重要な役割を期待されている。同社はプロセスDXの重要ツールとしてWalkMeを位置づけ、現在、次の5つの柱で、各部門での効果的なWalkMe活用を啓蒙・展開中である。

1.“使える状態”を作る
何もないところから始める必要がないよう、CoE側で導入プロセスやガイドラインといった「導入の型」を用意。併せて、ブラウザ拡張機能の配布や、IdP(Identity Provider)連携などのインフラ運用を仕組み化し、グループ全体でWalkMeをすぐに使える状態にしている。

2.“学べる状態”を作る
作り方がわからないことが原因で現場の手が止まってしまわないように、CoEが学習コンテンツやトレーニング、開発者認定までを一貫して提供。実案件でつまずいたポイントや、WalkMeとのQ&Aで得た知見をコンテンツへと落とし込み、「社内版ノウハウ集」に育てている。

3.“一緒に進める状態”を作る
初めて導入する部門では、利用イメージが湧きにくいため、CoEが立ち上がりを支援。現場による開発にCoEが伴走するだけでなく、部門側のリソース確保が難しい場面ではCoEが開発自体を行うなど、臨機応変に対応し、早期に成功体験を作るのが狙いである。

4.“聞ける状態”を作る
社内サイトで技術情報やガイドライン、FAQを公開すると共に、技術相談窓口を常設。困ったときに気軽に相談できる環境を作り、WalkMe導入に対するハードルを下げている。

5.“安全に運用できる状態”を作る
現場が誤操作なく安心して開発できるようにガバナンスを設計。例えば不慣れな開発者が誤って本番環境にリリースしてしまうといったミスを防ぐため、WalkMeのロールによる権限分離を実現している。

CoEメンバーの一人である飯田氏は、「土台がしっかりしていれば、現場は動くコンテンツの開発に集中できますし、開発人材が増えていくと、現場で継続的な改善を自走できるようになっていきます」と語る。実際、「KPIでモニタリングしてPDCAを回す」運用プロセスをCoEが定義しており、「WalkMeは、どういう機能を使ったかが可視化できるので、効果を測定しやすいですね。当社のプロセスDXではデータドリブンに改善サイクルを回しています。それはWalkMeでも同様です。データを根拠に現場と一緒に改善を進める土台として位置付けています」と荒井氏は説明する。

全基幹システムへの実装に向けては、まだ道半ば。具体的な効果を検証できるのはもう少し先になるものの、操作時間が半分以下になった例が出ているほか、コストの削減効果への期待も大きい。
「WalkMeを早い段階で実装すれば、現場が使いやすくなるだけでなく、外部に作成を委託していたマニュアルを減らすことができ、問い合わせも減り、これらの対応にかかっていた外部コスト、内部コストの両方を大幅に削減できます。まさに一石二鳥を狙えるツールです。」(浅香氏)

デフォルトでWalkMeを組み込み最初から“使える”システムへ

浅香氏が、「“最初から使えるシステム“を提供していくのが一番の理想」と言うように、システムを導入したあとに使い勝手を改善していくのではなく、今後は新規システムの立ち上げの段階からWalkMeを組み込んでいく考えだ。すでに稼働中のシステムにも適用を拡げ、その効果を横展開していくという。そのためにも、「さらに『やる腕』=スキルを上げていきたい」と荒井氏は意気込む。

一方で、「デジタルサービスの会社」として、IT基盤のさらなる高度化を実現し、社員が本来注力すべき価値創出の時間を増やしていくには、AIの活用が欠かせません。
「SaaSのように機能が非常に豊富だと、必要な機能がどこにあるのかわかりません。WalkMeの新しいAI機能では、やりたいことを入力するだけで自動案内してくれるだけでなく、汎用的な情報をある程度自動入力してくれるので、特に初めて使う人に役立つだろうと期待しています」と飯田氏。

また、「AI活用のあり方としては、ある程度AIに任せられる部分と、人間が介入するヒューマンインザループと、データ分析の領域での活用と、大きく3つの方向性がありそうです。これからのプロセスDXは、こうしたAI活用を前提としたプロセスへの最適化が必要になると考えています」と塩谷氏は展望する。

同社のプロセスDXへの取り組みに終わりはない。プロセスDXは現場目線で改善し続けるための“型”であり、WalkMeはその実行手段の一つとして、リコーが目指す「“はたらく”に歓びを」を叶えていく。

 

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