1922年創業の独立系電子部品メーカーのヨコオは、ServiceNowを国内外の拠点に適用していくにあたり、機能面はもちろんのこと、グローバルで活用するための仕組みが整備されているWalkMeを採用。トレーニング費用として確保していた数百万円の予算を使わずに済んだだけでなく、稼働後の問い合わせ対応、ServiceNow側の変更に伴う手順書の改訂、周知徹底の手間から解放された。今後計画されているServiceNowのグローバル展開においても、WalkMeの貢献が期待されている。

システム導入における成果の少ないトレーニングに疑問

創業100年を迎えた老舗の製造会社である株式会社ヨコオは、創業者である横尾忠太郎が職人時代に培った精密パイプ加工の技術を進化させながら、世界の電子・電機・自動車メーカーに対し、革新的な先端製品を提供してきた。同社の製品には、腕時計のベルト交換を容易にした「バネ棒」や、携帯ラジオ用アンテナとして発明された「ロッドアンテナ」、金属製のポールタイプが主流だった車載ラジオ用アンテナを小型化した「マイクロアンテナ」、医療用カテーテルに使用される部品など、身近なところで人々の安全で快適な暮らしを支えてきた製品も多い。創業時から受け継がれるコア技術を守りながら、車載通信機器(アンテナ)、半導体回路検査用コネクタ、電子機器用コネクタ、医療用微細精密部品の4つを主力事業に据え、今もなお「新しい」を生み出し続ける進化永続企業として挑戦を続けている。

顧客に業界のトッププレイヤーを持つ同社は、そのビジネス環境において、高いセキュリティレベルを求められることが多い。すべてのIT資産を正確に把握し、脆弱性対応をプロアクティブに実行していく必要がある。そのためのツールとしてServiceNowの導入を進めていたところに、定着化を支援するデジタルアダプションプラットフォーム(DAP)の存在を知った。

DAPに関心を寄せた理由を、中山氏はこう説明する。

「ServiceNowに限ったことではなく、システム導入時には、必ず最後にトレーニングの工程が待っています。実は、この工程がいつも無駄だと感じていました。スクラッチ開発のシステムなら、一度作ってしまえば長期にわたり大きく変わることがないので、手順書を作って教育すればそれでよかったのかもしれません。しかし、昨今のようにクラウド活用が進み、日々進化するのが当たり前になってくると、そうはいかないわけです。

手順書ではクラウドの進化のスピードに追随できず、結果的に古い手順書を見ていたり、手順が正しく伝わらなかったりすると、思わぬトラブルの原因になります。だからといって、大企業のようにマニュアルチームを用意できるほど人的リソースに余裕はありません。教育を外部委託するとなると少なくないコストがかかりますし、その割に成果が上がらず、稼働後の定着化は独力になってしまいます。どうしたものかと以前から頭を悩ませていたのです。」

株式会社ヨコオ 経営企画本部 サイバーセキュリティ対策企画室 技術企画室 部長 中山秀人氏

ServiceNowのグローバル展開を前提に“使える”DAPツールを選定

国産メーカーのDAPツールも存在するなかで、中山氏がWalkMeに着目したのは、海外展開を見据えてのことだった。世界最適生産体制の構築に向け、生産拠点の海外シフトを積極的に進めてきたヨコオは、海外生産比率が80%を超える。また、世界の各地域に事業拠点を持ち、市場のグローバルニーズに対応する地域密着型の営業サービスを展開している。

「ServiceNowをグローバルに適用していく流れがあるなかで、海外でも使えるというのは、単に機能的に使えるだけではなく、たとえば法的に使えることも重要になります。WalkMeは多言語化の機能が使い易いことに加え、技術面以外にもグローバルで活用するための仕組みが整備されています。特にGDPR対応していることは、当社がグローバルにシステムを活用していく上では必須の要件でした」と中山氏は評価する。

WlakMeの実装にあたっては、さまざまな特性のユーザーがいることを考慮ながら設計を進めていった。

「単純に画面に表示される指示どおりに操作できれば良い人ばかりではありません。全体の流れを俯瞰したい人も一定数存在します。読みたい資料を探すのに時間がかかったり、見つかったものの古い資料だったりすると、その労力や時間が完全に無駄になります。ですから、そういう人向けには、SharePoint上のURLを吹き出しに表示して、速やかにフロー図にアクセスできるようにしました。」(中山氏)

また一方で、ユーザーの声に対応するための工夫として、作り込み過ぎないことを心がけた。良かれと思って実装したものの、ユーザーのニーズは別のところにあった、ということも少なくない。容易かつ柔軟な操作性がWalkMeの強みでもあり、一気にすべてを作り込まず、必要に応じて段階的に足していく考え方で進めていった。

トレーニング費用数百万円の予算がゼロに

現在は、第一弾として、アプリケーション保守委託先のパートナー企業にて、SAP等の変更管理業務に適用。WalkMe実装済みのServiceNowの活用が始動したところだ。活用にあたっては、同パートナー企業スタッフに対し、2時間程度の説明会を実施したのみ。ServiceNowのトレーニング費用として数百万円の予算を確保していたが、WalkMeのおかげでその費用が完全に浮いた。それだけでもプロジェクトとしては十分な成果であるが、稼働後の問い合わせ対応に追われることなく、スムーズに稼働を開始できた点でもWalkMeの貢献は大きい。トレーニングとは別に専任のサポート体制を構築するとなると、さらなるコストが発生するのは必至であり、WalkMe導入によるコスト削減効果は言うまでもない。

また、稼働後にServiceNow側で操作手順の変更が発生した場合は、WalkMe側で即時反映しておくだけで済み、見てもらえる保証のない手順書の改訂や周知徹底は一切不要になった。ServiceNowのインスタンスをバージョンアップした際も、従来なら手順書の差し替え、ユーザーへの周知徹底、問い合わせ対応が発生していたが、WalkMe側の修正は発生しなかった。「稼働後の変更対応を委託先に支援してもらうとなると、我々が提示した要望に対し、複数回のやりとりを重ねてようやく実現するわけです。そこをWalkMeかつ自社の少ない工数で巻き取ることで、コストはもちろんのこと、スピード感が格段に違ってくることを実感しています」と中山氏。

さらに、今後グローバル展開するうえでのスピード感にも言及し、こう語る。

「そもそもこのツール(本記事の例ではServiceNow)を使わなければいけない理由を、ユーザーに理解してもらうプロセスにもなかなか骨が折れるものです。近くにいる人に説明するならまだしも、海の向こうにいる人に使ってもらうとなると、さらにハードルは高まります。WalkMeがあれば、いちいち説明に行く必要もありません。まずは何も考えずに使ってみて、考え方そのものについて疑問があればリンク先の資料に書いてあるから見てくださいと言えるからです。ユーザーの知識の習得や理解の深化を促す段階を省略できるという意味でも、WalkMeが役立っています。」

ツールの使い方を最適化するWalkMeの進化に期待

同社では、ServiceNowの国内外への展開計画を着々と進めており、それに伴いWalkMeの活用範囲もグローバルに拡がっていく予定である。WalkMeは、作成したコンテンツを再構築することなく多言語化対応でき、スピード感を持って横展開できるのも強みだ。また、ServiceNowに他の業務が集約されれば、WalkMeの役割はさらに増えていくと予想される。

中山氏は、「どんなクラウドサービスも、どう使うかがとても重要です。ServiceNowを活用してITサービスマネジメントの確立や高度化をを実現したい企業は多いと思いますが、ツールを導入すればすべてうまくいくわけではありません。おそらくクラウドサービス提供側で想定している手順のスタンダードが存在するはずで、それをテンプレートとしてWalkMeで実装できるようになると、さらに展開スピードが上がっていくでしょう」とWalkMeの進化にも期待を寄せる。

WalkMeの力を借りることでServiceNowの展開に大きな手応えをつかんだヨコオ。「WalkeMeの活用においてはユーザー目線で考えるスキルが必要不可欠です。これから当社と同じような展開をご計画されている企業があれば、ご相談に乗りますよ」と中山氏が語るように、同社の事例はベストプラクティスとして大いに参考になりそうだ。

株式会社ヨコオについて

独自の先進技術力と、グローバルに展開する生産拠点の生産技術力、サービス拠点網を駆使し、進化が加速する世界の電子・電機・自動車メーカーに対して、革新的な先端製品を提供。また、ITSに代表される社会インフラ用システムから医療デバイスに至るまで事業領域を拡大し、人々の安全で快適な生活に貢献している。

URL:https://www.yokowo.co.jp/

設立:1922年

資本金:78億円

代表者:代表取締役  

    徳間孝之

本社:東京都千代田区神田須田町1-25 JR神田万世橋ビル14F

従業員数:1,040人、グループ総計8,942人(2025年3月末現在)