企業の生産性と成長を促すためのシステムを適用し、UXを犠牲にしない形で業務プロセスの標準化を進めるために、同社が着目したのがデジタルアダプションツール(DAP)のWalkMeである。富士通では、約3年前にWalkMeを採用し、すでに他の社内システムでの利用が推進されており、その「グローバル対応力」と「分析力」に優位性があることは把握していた。
OneERP+プログラムで展開するシステムの利用者には、多くの海外の従業員がいるため、言語の違いは大きな障壁となる。WalkMeは、多言語対応はもちろんのこと、最適な時間帯でのサポートも充実しており、この先のグローバルでの標準化を力強く支援してくれる機能と体制は大きな安心材料だ。また、ユーザーの躓きポイントをリアルタイムで可視化し、迅速な改善を可能にするWalkMeの分析機能は、新しいシステムの早期定着化に貢献するとともに、より洗練されたUXを実現するうえで期待値が大きかった。さらに、複数のクラウドシステムとの連携実績が豊富であることも決め手の一つとなり、これらを総合的に評価した結果、WalkMeがOneERP+プログラムの成功に最適なツールであるとの判断に至った。
導入にあたっては、はじめに特定の領域を対象に、SAP S/4 HANA上での適用検証を2か月間実施。実装の難易度を確認するとともに、グローバル規模のシステムへの実装であることを踏まえ、リスクを最小限に抑えつつ、限られた期間とリソースで本稼働に漕ぎつけるために何が必要かを慎重に検討することにした。その結果、実装上の工夫として同社が実行した対応策は、「組織を超えた役割分担」と「各業務部門との合意形成」の2つである。
「OneERP+プログラムのサービスマネジメントチームと、WalkMeの社内CoEを務めるDAP推進チームが共同で実装に取り組み、必要に応じてWalkMe社から技術的なサポートを受けることで、スキル面での不足を解消していきました。また、得られた知識を社内で流通させ、こうした連携による価値を最大限に引き出せるように心がけました。OneERP+プログラムは、関係する業務部門が多岐にわたるのも特徴です。各業務部門でWalkMe責任者を擁立してもらい、その責任者が各業務領域の意思決定に責任を持つ体制を取ることで、各部門が日々の業務効率化やUX向上に向けて積極的にWalkMeの実装を検討するようになっていったように思います。」(小笠原氏)
ただ、WalkMeの利用経験がない業務部門からの実装依頼は、UX向上に貢献するものばかりではない。表面的な問題が解決されても、本質的な課題が解決できないばかりか、かえって使い勝手を損ねることも考えられる。したがって、要求のままに実装するのではなく、各業務部門へ丁寧なヒアリングを重ね、実装の目的や業務プロセスを深く理解したうえで、ユーザー視点で最適な実装のあり方を提案するようにしたという。
河田氏は定着化に向けた取り組みを振り返り、「さまざまなステークホルダーがいますから、コミュニケーション面での工夫が求められました。まず、ファーストステップとして、WalkMeとは?を理解してもらうために、約1か月をかけて一つひとつの業務領域に対して説明の機会を設け、地道に理解を促していきました。WalkMeはシステムそのものに手を加える必要がないので、比較的好意的な反応が多く、抵抗感は特になかったようです」と語る。
