富士通株式会社 CEO室 Data&Process Division シニアマネージャー 橋本千加子氏 (左)
富士通株式会社 CEO室 Data&Process Division 河田夏実氏 (中)
富士通株式会社 Corporate Digital本部 Enabling Technologies 統括部 小笠原海大氏 (右) 

世界をリードするグローバル総合ICT企業の富士通は、データドリブン経営を加速する全社横断プロジェクト「OneFujitsuプログラム」の要となるOneERP+プログラムを始動。その推進にあたり、標準化とユーザーエクスペリエンス(以下、UX)の確保を両立させるうえでWalkMeは必要不可欠と判断し、導入を決めた。現在は、対象システムへの実装を段階的に進めており、早期定着化と問い合わせの削減に大きく貢献することを確認。グローバルでの標準化も始まるなか、さらなるUXの向上による業務の標準化と効率化を目指し、その活用を深化させている。

グローバル規模での標準化にUX確保が必要不可欠と判断

2019年9月にIT企業からDX企業への転換を宣言した富士通株式会社は、世界をリードするDXパートナーとしてお客様のDX実現を支援していくにあたり、自らがDX企業になるべく、2020年7月に全社DXプロジェクト「フジトラ(富士通のトランスフォーメーション)」に着手。その具現化に向けては、「リアルタイムマネジメント」「データ化・可視化」「ビジネスオペレーションの標準化」を重点施策に据え、データドリブン経営を加速する「OneFujitsuプログラム」を全社横断で推進してきた。

このOneFujitsuプログラムの理念のもと、「データドリブン経営の実現」と「オペレーショナルエクセレンスの追求」という二つの大きな目標を掲げ、2024年10月より全社規模で本格始動したのが、業務プロセス変革プログラム「OneERP+(ワンイーアールピープラス)」である。社長直下の組織で同プログラムを推進する橋本氏は、この変革を実現するための鍵は「標準化」だとしてこう説明する。

「OneERP+プログラムでは、SAPを主軸にServiceNowやQlik Senseなど、複数のクラウドシステムを対象にグローバル展開を計画していますが、実現したいことは単純なシステムの置き換えではありません。経営から業務部門まで組織全体を巻き込み、リアルタイムデータを基にした経営と業務の効率化を目指す、全社変革のプロジェクトです。そのために、富士通固有のAsIsを踏襲するのではなく、Fit to Standardをキーワードにグローバルレベルでの標準化を推進しています。つまり、システムをユーザーに合わせるのではなく、ユーザーがシステムや標準プロセスに合わせていく必要があるわけです。

そうなると、ユーザーの間で多くの混乱や反感が生じることは容易に想像できます。この大規模な変革を成功させるためには、11万人以上の従業員に対し新しいシステムをスムーズかつ効率的に展開できるように、可能な限りSaaSの標準機能を活用しつつも、UXを確保することが必要不可欠だったと言えます。」

OneERP+プログラムを成功に導くツールとして評価

企業の生産性と成長を促すためのシステムを適用し、UXを犠牲にしない形で業務プロセスの標準化を進めるために、同社が着目したのがデジタルアダプションツール(DAP)のWalkMeである。富士通では、約3年前にWalkMeを採用し、すでに他の社内システムでの利用が推進されており、その「グローバル対応力」と「分析力」に優位性があることは把握していた。

OneERP+プログラムで展開するシステムの利用者には、多くの海外の従業員がいるため、言語の違いは大きな障壁となる。WalkMeは、多言語対応はもちろんのこと、最適な時間帯でのサポートも充実しており、この先のグローバルでの標準化を力強く支援してくれる機能と体制は大きな安心材料だ。また、ユーザーの躓きポイントをリアルタイムで可視化し、迅速な改善を可能にするWalkMeの分析機能は、新しいシステムの早期定着化に貢献するとともに、より洗練されたUXを実現するうえで期待値が大きかった。さらに、複数のクラウドシステムとの連携実績が豊富であることも決め手の一つとなり、これらを総合的に評価した結果、WalkMeがOneERP+プログラムの成功に最適なツールであるとの判断に至った。

導入にあたっては、はじめに特定の領域を対象に、SAP S/4 HANA上での適用検証を2か月間実施。実装の難易度を確認するとともに、グローバル規模のシステムへの実装であることを踏まえ、リスクを最小限に抑えつつ、限られた期間とリソースで本稼働に漕ぎつけるために何が必要かを慎重に検討することにした。その結果、実装上の工夫として同社が実行した対応策は、「組織を超えた役割分担」と「各業務部門との合意形成」の2つである。

「OneERP+プログラムのサービスマネジメントチームと、WalkMeの社内CoEを務めるDAP推進チームが共同で実装に取り組み、必要に応じてWalkMe社から技術的なサポートを受けることで、スキル面での不足を解消していきました。また、得られた知識を社内で流通させ、こうした連携による価値を最大限に引き出せるように心がけました。OneERP+プログラムは、関係する業務部門が多岐にわたるのも特徴です。各業務部門でWalkMe責任者を擁立してもらい、その責任者が各業務領域の意思決定に責任を持つ体制を取ることで、各部門が日々の業務効率化やUX向上に向けて積極的にWalkMeの実装を検討するようになっていったように思います。」(小笠原氏)

ただ、WalkMeの利用経験がない業務部門からの実装依頼は、UX向上に貢献するものばかりではない。表面的な問題が解決されても、本質的な課題が解決できないばかりか、かえって使い勝手を損ねることも考えられる。したがって、要求のままに実装するのではなく、各業務部門へ丁寧なヒアリングを重ね、実装の目的や業務プロセスを深く理解したうえで、ユーザー視点で最適な実装のあり方を提案するようにしたという。

河田氏は定着化に向けた取り組みを振り返り、「さまざまなステークホルダーがいますから、コミュニケーション面での工夫が求められました。まず、ファーストステップとして、WalkMeとは?を理解してもらうために、約1か月をかけて一つひとつの業務領域に対して説明の機会を設け、地道に理解を促していきました。WalkMeはシステムそのものに手を加える必要がないので、比較的好意的な反応が多く、抵抗感は特になかったようです」と語る。

月間約15,000件の問い合わせを稼働後3か月で約3,000件に削減

同社では、中核となるSAP S/4HANAに加え、周辺システムのServiceNowやSAP Ariba、Qlik Senseなどの複数システムを対象に、現時点で290要件以上のWalkMeコンテンツを実装している。スマートチップやランチャー機能を用いたユーザーへの注意喚起、操作手順のガイダンスなどを通じて、システム稼働後のユーザーの迷いを解消。WalkMeの実装により問い合わせを90%削減できた要件もあることから、全290要件の実装による効果は非常に大きいと言える。

また、稼働時に月間約15,000件あった問い合わせは、マニュアルの改善やFAQ拡充に加え、WalkMeを最大限活用したことで3か月後には約3,000件に減少した。「WalkMeは、ユーザーにとってより使いやすいシステムへ、継続的な改善を繰り返しながら定着化を促進できる柔軟性が強みの一つです。稼働直後のハイパーケア期間に発生したトラブルに対しても、システムに手を加えることなく、WalkMeコンテンツの実装を通じてスピーディーに対応できました」と河田氏が語るとおり、同社は、WalkMeを最大限に活用することで問い合わせを段階的に抑止し、現場の混乱解消を回避していった。業務部門にも迅速な対応を可能にするWalkMeの効果は高く評価されており、稼働後半年以上経った現在も、新規実装の依頼が続いているという。

Insights機能による課題解決でさらなるUXの改善に注力

OneERP+プログラムはまだ道半ばである。国内では、一部のビジネス領域およびグループ会社への実装が控えているほか、2025年10月にはグローバル展開がスタートし、ひとまずオセアニア、シンガポール、タイの拠点での稼働が予定されている。その先も順次、実装範囲を拡大していく見込みだ。一方で、WalkMeの活用も深化させていく。UXのさらなる向上に向けて、分析機能であるInsightsの活用を活性化していきたいとして、「WalkMeは分析力に非常に長けているので、操作ログをもとに、問い合わせ内容の分析結果と掛け合わせながら、まだ目には見えない潜在的な課題を発見し、コンテンツ実装につなげていきます」と橋本氏。

また、小笠原氏は、「WalkMeの知見が豊富なメンバーだけではユーザー起点の改善アイデアには限界があります。今後はUXに幅広い知見を有する専門家に参画してもらい、さらに質の高いコンテンツを実装することで課題解決を図り、より高い効果を創出していきたいと考えています」と語り、WalkMeの活用を通じたさらなる生産性の向上を目指す。

OneERP+プログラムの成功に不可欠なツールとして採用したWalkMeに、十分な手ごたえを感じている同社。全従業員が足並みを揃え、スピード感をもってグローバル規模での大変革を推進していくうえで、WalkMeの価値を最大限に引き出す挑戦が続いていく。

富士通株式会社について

1935年に日本で創立して以来、さまざまなテクノロジーを世に生み出し、社会やお客様の発展に貢献することに取り組んできた。「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」というパーパスの実現に向けて、2030年を見据えたビジョン「デジタルサービスによってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになる」のもと、「挑戦」「信頼」「共感」の3つの価値観を原動力に、富士通にしかできない価値創造を目指している。

URL:https://www.fujitsu.com/jp/
設立:1935年6月
資本金:3,256億円(2025年3月31日現在)
代表者:代表取締役社長 時田隆仁
本社:神奈川県川崎市中原区上小田中4-1-1
従業員数:113,000人(連結従業員数)
(2025年3月31日現在)