日清食品ホールディングス株式会社 財務経理部 Data&Process Division 課長 矢島氏

日清食品ホールディングスの財務経理部は、2021年にSAP ConcurとWalkMeを同時に導入。問い合わせ対応に多くの時間を割いている現状を改善するため、さらなるテコ入れに踏み切った。同社が一貫して目指すのは、マニュアルレス、問い合わせレスの世界。徹底的なユーザー目線でWalkMeを改修することにより約3割の問い合わせを削減した。また、新たに社内専用の「NISSIN AI-chat」との連携を実現することで、更なる問い合わせ削減を目指している。SAP Concurへの実装が一段落した今、他システムへの実装も検討しており、より広範囲にWalkMeの価値がもたらされようとしている。

WalkMeの導入成果を実感しつつも依然として問い合わせ対応の工数に課題

世界初の即席麺としてチキンラーメンを開発し、「お湯を注ぐだけで食べられる」という新しい価値を創造したことに始まり、その後も世界初のカップ麺「カップヌードル」、最新のフードテクノロジーを駆使し最適化栄養食に認証された「完全メシ」など、革新的な商品を世に送り出し続ける日清食品ホールディングス株式会社。他社の追随を許さない技術革新力と商品開発力、およびマーケティング力を通じて、新しい価値・食文化を世の中にもたらし、食のリーディングカンパニーとして今もなお成長し続けている。

中長期成長戦略の達成に向け、ビジネスモデル変革と生産性向上を両軸とする「NISSIN Business Transformation」を推進するにあたり、その一環として財務経理業務のDXに着手した同社は、2021年、出張・経費管理に特化したクラウドサービス「SAP Concur」を導入。併せて、正しい操作のナビゲーションやガイダンス、オートメーションを可能にするデジタルアダプションプラットフォーム「WalkMe」をあらかじめSAP Concurに実装した形で導入した。

WalkMeを実装することで目指したのは、ユーザーがテクノロジーに合わせるのではなく、テクノロジーがユーザーに寄り添うことで実現する、マニュアルレス、問い合わせレスの世界である。つまり、「誰もが使いこなせる」世界の実現によって、ユーザーの業務上のストレスを大きく軽減するとともに生産性を高め、本来業務に集中できる時間を増やす狙いがあった。

同社は、お問い合わせ対応に多くの時間を割いている実態があったとして、矢島氏はこう振り返る。
「月間およそ200時間、件数にして約200件もの問い合わせに対応しており、まだまだ改善の余地を残している状態でした。問い合わせ内容の大半が、マニュアルに記載されているものなので、調べればわかる話ですが、マニュアルが300ページぐらいあり、これだけの情報量の中から必要な情報を探すのが大変であることは、想像に難くありません。そこへ、インボイス制度が始まり、電子帳簿保存法の改正があり、ルールがますます複雑化していき、ユーザーにこれらの理解を求め過ぎるのは酷なのではないかと思い始めていました。」

さらなる問い合わせの削減へユーザー目線でのテコ入れを実施

そこで同社は、WalkMeによる第2弾のテコ入れに踏み切った。具体例を挙げると、チキンラーメンでおなじみのキャラクター「ひよこちゃん」にインボイス制度のことを説明させたり、300ページものマニュアルをわざわざ見に行かなくてもいいように、ポップアップで必要な情報だけを切り出して表示したり、質問が出そうな箇所には「困ったらこちら」という吹き出しを表示してよくある問い合わせ(FAQ)の閲覧を促したり、そこかしこに徹底的にユーザー目線での改善を施したのである。

「30日以上業務処理が滞留している人にはチャットで督促をするのですが、よくありがちなのが、やり方がわかりませんという返信が来て、そこから問い合わせが始まるケースです。だいたいやりとりのパターンも予測がつくものなので、少し残念そうな表情のひよこちゃんを登場させつつ、処理の仕方がわからない場合はここを見てね、というように優しくポップに手順を教えるような工夫もしました。」(矢島氏)





問い合わせ内容から分析したユーザーのつまずきポイントに対してWalkMeを設定するだけでなく、なるべく受け入れてもらいやすいように、自社のキャラクターを使って思わず和んでしまう雰囲気を作り出したのがポイントだ。

また、社内専用の「NISSIN AI-chat」との連携も、今回新しく取り組んだことの一つである。全社規模で積極的にAIの活用を進める同社は、その利用率が約7割と高い。NISSIN AI-chatによって年間約3万時間分もの作業時間の削減を達成しており、他のAIチャットツールによる導入効果も人件費を1人あたり約18万円削減できているという。同社は、WalkMeの画面経由でNISSIN AI-chatに問い合わせを行い、AIがFAQのデータベースから必要な情報を探し出して回答してくれる仕組みを構築している。このFAQのデータベースには、過去の問い合わせ情報が自動で連携されるようになっており、問い合わせに対応すればするほど回答の精度が上がっていく仕組みだ。

かゆいところに手が届く改善で月間約3割もの問い合わせを削減

こうしたかゆいところに手が届く改善を実施した一番の狙いは、問い合わせの削減にあった。WalkMeを導入した当初から、マニュアルレス、問い合わせレスの「誰もが使いこなせる」世界の実現を目指すという目的は一貫している。「我々は、財務経理部だけではなく、現場のユーザーが困っているという事実を一番大きな課題と捉えていました。たとえば、営業だったら、なるべく多くの時間を事務作業ではなく営業に使ってほしいわけです。ユーザーから困っているという声が挙がっていたわけではありませんが、年間で2,400件もの問い合わせが来ているということは、それだけ困っている人がいるという事実を物語っています」と矢島氏。

今回のテコ入れによって、同社は月間約3割もの問い合わせの削減に成功した。「社会的に人手不足が深刻化する中で、何もせずにいたら、仕事を回すために必要な機能が欠損していくばかりです。これからの時代は、業務の生産性を高めつつ、創出された時間で出来ることを増やし、新しい仕事に対応していかなければなりません」と矢島氏が説明するとおり、同社がその先に見据えるのは「事業継続性の担保」である。

メンテナンスフリーの世界へテクノロジーの進化にも期待

SAP ConcurへのWalkMeの実装が一段落した同社では、さらなる問い合わせの削減を目指して引き続き細かなメンテナンスを行いつつも、今後は社内イントラネットや基幹システムなど、他のシステムにWalkMeを展開していくことを検討しているという。

一方で、可能性の幅を大きく広げてくれるAI技術に期待するところも大きい。
「実装する機能に関するアイデアを生み出すスキルと、それを実際の機能に落とし込むスキルは別ものなんですよね。WalkMeの実装にあたっては、どうしても開発のスキルが必要になります。つまり、開発要員を確保する必要があり、その人たち以外は開発できないという現実もあります。将来的には、こういう機能がほしいとWalkMeに伝えたら、自動的に実装してくれるようなメンテナンスフリーの世界が実現することを心待ちにしています。」(矢島氏)

実際WalkMeでは、AI技術を取り込むことでユーザーにとってのメリットを増やしていくだけでなく、開発担当者にとっての生産性向上につながる新しい価値の創出に取り組んでいるところだ。日清食品ホールディングスは、テクノロジーの力を借りながら、真に「誰もが使いこなせる」世界へと着実に歩みを進めている。

日清食品ホールディングス株式会社について

日清食品グループの持株会社として、グループ全体の経営戦略の策定・推進、グループ経営の監査、その他経営管理などを行う。1948年の設立以来、即席麺、チルド食品、冷凍食品などの製造・販売を通して、さまざまな「食」の可能性を追求し、夢のあるおいしさを創造すると共に、人類を「食」の楽しみや喜びで満たすことを通じて、社会や地球に貢献している。

URL  :https://www.nissin.com/
設立  :1948年9月
資本金 :251億2200万円(2025年3月現在)
代表者 :代表取締役社長・CEO 安藤宏基
本社  :東京都新宿区新宿6-28-1
従業員数:連結17,512人(2025年3月現在)