チャレンジ
製品内の顧客体験の不備によるユーザーの離脱
IBMは100年以上にわたり、ATMや磁気ストライプカード、バーコードなど、数々の革新的な技術を生み出してきました。現在は、クラウドプラットフォームおよびコグニティブ・ソリューションのリーディングカンパニーとして業界を牽引しています。
「近年、IBMはデジタルトランスフォーメーションの最前線に立ってきました。私たちはお客様のデジタルテクノロジー導入を支援する一方で、自社でも積極的にデジタルテクノロジーを採用し続けています」と、IBMのCognitive Apps部門でCDOを務めるニランジャン・アドヤ氏は語ります。
B2B製品の複雑な特性から、IBMには顧客体験のあらゆるステージで支援を提供する戦略が求められていました。IBMのデジタル製品群の中には、初期体験でユーザーの関心が薄れ、結果としてユーザー離脱率が高くなっていたものもありました。
アドヤ氏とチームは、この課題がIBMのデジタル製品のサブスクリプション率や売上に影響していることを認識。ユーザーを惹きつけ、マイルストーンの達成を支援しながら顧客獲得を改善するためには、デジタルアダプション戦略の確立が不可欠だと考えました。
「ユーザーが製品の価値を理解し、利用体験の中で『Wow!』と感じる瞬間に到達できれば、それが差別化の要因となり、最終的に契約へつながる可能性が格段に高まることはわかっていました」とアドヤ氏は振り返ります。
ソリューション
ユーザーエンゲージメントと定着改善のためのアプリ内ガイダンス
IBMがWalkMe導入で最初に注力したのは、ユーザー体験の最適化でした。WalkMeは25を超えるIBM製品でオーバーレイとして機能し、アプリ内にガイダンスやサポートコンテンツを迅速に展開することで、ユーザーのオンボーディングをスムーズに支援します。
「WalkMeはセットアップからオンボーディングまで、ユーザーを迷わず導きます。ユーザーはより早く成果を実感できるようになり、より良い利用体験へとつながりました。また、WalkMeはアプリ内サポートを一元化し、ユーザーが必要な情報をその場で簡単に見つけられるようにしています。」とアドヤ氏は語ります。
アドヤ氏のチームは、各アプリケーションに散在していたサポートリソースをWalkMe上に統合。従来のドキュメントでは理解しづらかった主要機能を、ステップごとに分かりやすく案内するスマート・ウォークスルーを作成しました。
さらにIBMは、WalkMeを顧客データおよび分析プラットフォーム「Segment」と統合しました。これにより、複数のデジタルプラットフォームを横断してデータを一元管理できるようになり、ユーザー行動をより深く分析して、一人ひとりに最適化されたアプリ内体験を提供することが可能になりました。
このWalkMeとSegmentの統合によって、IBMはユーザージャーニーにおける重要な行動マイルストーンを特定できるようになりました。
チームの分析によると、WalkMeを利用してアプリケーション内でエンゲージしたユーザーは、そうでないユーザーに比べてマイルストーンを達成する確率が300%高く、同様にWalkMeを利用するユーザーは、利用しないユーザーと比較して、初回ログインから7日後に再びアプリケーションを利用する確率も300%高いことが明らかになりました。
利点
即時効果:定着率6倍向上、コンバージョン率4倍改善
WalkMeの導入により、IBMのデジタル製品体験は大幅に改善され、測定可能な成果が得られました。現在、25の実装が稼働中で、さらに15件の導入が進行中です。WalkMe導入以前は、アプリ内でのユーザー育成体験がほとんどありませんでしたが、現在は直感的なガイダンスや重要なリソースを提供し、各ユーザーが製品内で目標を達成するために必要なサポートを確実に受けられる体制を整えています。
さらに、ユーザー体験の中にアンケートを統合することで、フィードバックデータを一元化し、エンゲージメントを向上させることができました。
「WalkMeの効果は即座に表れました。初期段階でのユーザーアダプション改善をきっかけに、ユーザー定着率が6倍に、トライアルから契約へのコンバージョン率が4倍に向上しました。製品のオンボーディングを迅速化しただけでなく、ユーザーが必要とするタイミングで直接サポートを受けられるようにしました」とアドヤ氏は述べています。
導入後わずか2週間で、1,000人以上のユーザーがサポートチケットを発行する代わりにWalkMeを使用してトラブルシューティングを行いました。
WalkMeはIBMチームの日常業務も改善しました。WalkMeを使用することで、アプリ内体験の変更に際して開発者や製品リリースサイクルに依存する必要がなくなり、以前は開発とQAに数か月を要していた変更も、数時間以内に実施できるようになりました。
Segmentとの統合によって、これまで得られなかったユーザージャーニー全体のインサイトにもアクセスできるようになりました。「製品がどのように利用・消費されているのか、その実態を明確に把握できるようになりました」とアドヤ氏は説明します。
複数のシステムをまたいでデータを分析するのではなく、IBMはWalkMeとSegmentという2つの強力なプラットフォームから直接インサイトを収集できるようになりました。
このデータ収集の効率化により、開発チームの業務効率は96%向上し、約5か月分の開発工数をより価値の高いプロジェクトに充てられるようになりました。
また、WalkMeとSegmentの統合によって、IBMはユーザージャーニーの中で重要な行動マイルストーンを特定できるようになりました。
「WalkMeの導入によって、製品の利用、消費、定着率はいずれも300%改善しました。
さらに、デジタルサービスの収益成長は目標の2倍となる80%増加を達成することができました」とアドヤ氏は総括しています。