【後編】DAP Summit 2025 脱・DX迷宮 ~DAPは、DX成功のラストピース

WalkMe Team
By WalkMe Team
Updated August 25, 2025

注目度の高さを物語る、昨年に引き続きの満員御礼

WalkMe株式会社は、2025年7月16日、TODAホール&カンファレンス東京(東京都中央区)にて、「DAP Summit 2025」を開催しました。2回目となる本イベント、参加登録者は1100名を超え、初開催だった昨年に引き続き満員御礼。本年度は、テーマを「脱・DX迷宮 ~DAPは、DX成功のラストピース」と銘打ち、WalkMe、SAP、ユーザー企業、パートナー企業、特別ゲストによる計12本のセッションが実施され、多種多様な視点からDX戦略を取り巻く環境とその最新事例について紹介されました。

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【NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社/株式会社日立製作所】成功の決め手は、使いながら改善するアプローチ

日下 昌彦 氏
NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社
経営戦略本部 経営プラットフォーム構築推進室/室長
栗林 伸行 氏
株式会社日立製作所
インダストリアルAIビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 エンタープライズパッケージソリューション本部 ERPグローバルサービス部/部長


NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社では、国内59社にわず5.5カ月という短期間でSAP Aribaを一斉展開しました。この舞台裏を紹介するために、本セッションには同社 経営戦略本部 経営プラットフォーム構築推進室/室長 日下昌彦氏(以下、NX日下)、さらにその導入支援を手がけた株式会社日立製作所から、インダストリアルAIビジネスユニット エンタープライズソリューション事業部 エンタープライズパッケージソリューション本部 ERPグローバルサービス部/部長 栗林伸行氏(以下、日立栗林)が登壇。WalkMe株式会社 竹谷和久がモデレーターを務める形で進行されました。

――最初に、本プロジェクトの全体像をお聞かせください。

NX日下:「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」という長期ビジョン実現のためには、世界中のグループ全体で統一された業務プロセス、さらにはそれを支えるシステム基盤の構築が不可欠でした。

日立栗林:そこで、SAP S/4HANAを中心に、グループ経営管理基盤をグループ・グローバルへ展開。併せて、カタログ購買・請求書払いの実現のためSAP Aribaを導入し、同時に、WalkMe、ServiceNow、プロセスマイニングなどの保守DXと連携したシステムを構築しました。

――本プロジェクトの特徴は? また、実現するためには、どのようなチャレンジがあったのでしょうか?

NX日下:やはり、Fit to Standardの方針を貫きながら59社で一斉展開するという、規模感とスピード感が一番のチャレンジでした。成功の決め手は、まず立ち上げて使ってみる、使いながら改善していく、というアプローチにあったと思います。

日立栗林:そうですね。最初から100点を目指すのではなく、まず60点で立ち上げて、そこから現場の声を反映、改善していく。そのアジャイル的な開発プロセスにおいて、WalkMeをはじめとした各種デジタルツールを活用することで、早期定着を促すことができました。

――短期間での作業完了のため、特に注力したのはどんな部分ですか?

日立栗林:先に述べたようにアジャイルで進めつつ、インターフェイスは従来のウォーターフォール型での進行が求められる。このハイブリッドな開発方式をパラレルで走らせたことが、工期短縮に貢献したと考えています。

NX日下:もうひとつ、複数の企業が参加するマルチベンダー開発ながら、チームとしての結束がしっかりあったことも、このスケジュールで完遂できた大きな理由だと思います。

――本プロジェクトにおいて、特にWalkMeが果たした役割について教えてください。

NX日下:短期間での導入と定着実現のため、複数のデジタルツールを採用しましたが、その中心となったのがWalkMeです。誰でも迷わず操作できる環境を整え、トレーニングレスでゴーライブが実現できました。

日立栗林:具体的な施策の一例を紹介すると、まずSAP Aribaの画面遷移シーンにSmart Walk-Thru機能を入れて、オペレーションガイドを準備しました。またSmartTipsを活用し、S/4HANAとの相関チェックガイドなど、特定画面に対してのヘルプ機能を設けました。これは、バリデーションチェックとしても非常に有効だったと感じています。

NX日下:そうですね。WalkMeをはじめ様々なツールを連携することで業務プロセスを可視化し、ボトルネックを特定。PDCAサイクルを健全に回すことができました。今後は、生成AIも活用した新たな展開に期待をしています。

【株式会社コンカー】ビッグデータとAIで、非付加価値領域の業務を極小化

橋本 祥生 氏
株式会社コンカー
代表取締役社長


コンカー日本法人は、2010年設立。経費精算クラウドマーケットにおいて、国内11年連続シェアNo.1を獲得しています。「経費精算は、非付加価値領域。この分野における業務を抜本的に極小化するべきであるというのが、我々の主張です」と、株式会社コンカー 代表取締役社長 橋本祥生氏は話します。

進化を続けるテクノロジーを最大限活用することで、ガバナンスに直結するバックオフィス領域のリスクを低減。さらに、よりやりがいのある業務を人がおこなうことでエンゲージメント向上にも貢献する。これらを同時並行で進行していくことが、コンカーの考える間接費領域のトランスフォーメーションの打ち手であると提言します。

コンカーが目指す、「経費精算のない世界」。この実現のためには、①キャッシュレス、入力レス、ペーパーレス、②承認レス、③管理の高度化、この3点が欠かせないと、橋本氏は続けます。「WalkMeは、特に③において、その力を大いに発揮します。明解なナビゲーション機能はもちろん、各企業で異なる規定についてもポップアップで表示することが可能。社内の複数システムでWalkMeを活用しているという企業も多く見られます」

WalkMeと同じく、SAPグループの一員であるコンカー。AIエージェント「ジュール」と、データ、そして業務アプリケーションを、三位一体で連携させることによって、組織全体の業務最適化を実現し、イノベーションの好循環を醸成することが、グループ全体のAI戦略であることにも言及しました。「さらに我々コンカーとしては、①AI-OCR、②不正検知、③自律運用、④改善提案という、4ステップでAIサービスを展開するというロードマップを描いています。コンカーは、世界で最も多くの経費データを保有している組織。このデータをAIと掛け合わせることで、様々なインサイトにつながると考えています」

【株式会社荏原製作所】「没入感、デザイン、データ分析」で、ゼロマニュアル化

佐藤 和也 氏
株式会社荏原製作所
情報通信統括部 戦略企画部 ビジネスアクセラレーション課/課長


「いまこの瞬間も、どこかの現場で、誰かが、『それ、マニュアルに書いてあるのに…』ってつぶやいている。そんな気がしませんか?」。株式会社荏原製作所 情報通信統括部 戦略企画部 ビジネスアクセラレーション課/課長 佐藤和也氏のセッションは、そんな問いかけから始まりました。

せっかく一生懸命マニュアルをつくっても、実際はなぜか伝わらない、使われない。操作に迷った従業員が、結局はマニュアルを開かずに周囲のスタッフに口頭で聞いている、というのはよくある話です。「荏原製作所では、脱マニュアルのために、3つの柱で取り組んでいます。①直感的な操作が可能な没入感、②誰にとってもわかりやすいユニバーサルなデザイン、③データ分析による操作状況の可視化。この3つのポイントを強力に連携、サポートしてくれるのがWalkMeなんです」

荏原製作所におけるWalkMe採用のきかっけは、コロナ禍。新システム導入のタイミングで在宅勤務がメインとなってしまい、説明会はオンラインで実施せざるを得ませんでした。多数のグループ会社を抱える同社にとっては、各現場に合わせたカスタマイズが必要。社員のリテラシーにも幅があるという状況の中、佐藤氏が注目したのがWalkMeでした。2023年の3月に初導入以来、2025年6月までに、実に45システムでの実装を完了しています。

「WalkMeは単なるガイドツールではなく、業務の流れに溶け込みながら、現場の動きを支える存在。課題が発生してから入れるのではなく、新システム導入時にWalkMeもセットで組み込むことで、その効果を最大限に発揮できます」と、佐藤氏は説明します。さらにそこにデザインの力も加えて、ユーザーがよりWalkMeの存在を意識せずに“没入して”使うことができる工夫にも、継続的に取り組んでいるという荏原製作所。「ただ導入するのではなく、生かし切る、そして突き抜ける。そんなブレークスルーフェーズへ、皆さんと一緒に到達したいと考えています」

【富士通株式会社】まず自社で実践することで、最適な支援サービスを提供

白鳥 章二郎 氏
富士通株式会社
Corporate Digital本部 EnablingTechnologies/統括部長
林田 祐介 氏
富士通株式会社
クラウド&ビジネスアプリケーション事業本部 SAP事業部/シニアマネージャー


実践値に基づいた有効性のあるサービスを提供するためには、まずは自分たち自身がDXを実現し、変革。それをフレームワーク化してクライアントに届けるというのが根本的な考え方であると、富士通株式会社Corporate Digital本部 Enabling Technologies/統括部長 白鳥章二郎氏は話します。「そこで社内でスタートさせたのが、富士通トランスフォーメーションプロジェクト。略して、『フジトラ』です」

フジトラには、「OneFujitsu」という考えが据えられています。これは、変革に向けたグループ横断イニシアティブであり、①合理的・迅速な意思決定を支えるリアルタイムマネジメント、②経営資源のEndo to Endでのデータ化・可視化、③グローバルでのビジネスオペレーションの標準化という、3つの重点施策の実現を目指すものです。

さらに白鳥氏は、UXの重要性についても指摘。「新サービス導入の結果、生産性が落ちてしまっては本末転倒。グローバル標準化とUXを両立させるため、採用しているのがWalkMeです」。One Fujitsuプログラムの中心に据えられているのは、「One-ERP+システム」。これは、S/4HANAを基幹として、様々な業務システムを連携させ、全体最適を目指したシステム構成です。「準備段階からWalkMeを組み込む前提で設計をおこない、テストにおける操作性の改善はすべてWalkMeで対応。さらに、説明書を作成する代わりにWalkMeコンテンツを組み込むことで、これまでにない導入スピードを実現しました」

ここでマイクは、同社 クラウド&ビジネスアプリケーション事業本部 SAP事業部/シニアマネージャー 林田祐介氏へ。富士通が提供する、WalkMeの導入支援、カスタマーサクセスマネージメント、これらふたつのサービスについて紹介されました。「実際にWalkMeを活用している立場だからこそ、よりよい企業システムに近づけるためのご支援ができると考えています」と、述べました。

会場外のホワイエスペースには、パートナー企業のソリューションブースが数多く出展し、パズルラリーやAIアイデアコンテストといった体験も。さらに、ミニステージでもセッションが開催され、参加者の皆さんは休憩時間中も情報収集に余念がない様子でした。また全セッション終了後には、ホワイエがネットワーキング会場に早変わり。WalkMe代表・小野の乾杯挨拶で立食パーティがスタートし、多くの情報交換がおこなわれていました。


2回目の開催となった、「DAP Summit」。加速するテクノロジーの進化を背景に、それをより効果的にビジネスに生かすため、DAPへの注目度はより高まっていることが実感されるイベントとなりました。


当日の講演動画はこちら(一部セッションを除く)

【前編】DAP Summit 2025 脱・DX迷宮 ~DAPは、DX成功のラストピースを読む
【中編】DAP Summit 2025 脱・DX迷宮 ~DAPは、DX成功のラストピースを読む
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