「最近、ROIに会いましたか」
WalkMe株式会社は2026年9月10日、高輪ゲートウェイ コンベンションセンター(東京都港区)にて「WalkMe on Tour Tokyo 2026」を開催しました。参加登録者は1,500名を超え、過去最大の規模になりました。本年度のテーマは「AIの可能性を、成果に変える」です。冒頭に流れたのは、ロイという人物を探すショートフィルムでした。画面に映し出されたのは、クラウドの到来、パンデミック、そして一度に押し寄せたAIの波。変化のたびに広がっていくギャップを前に、ロイは姿を消します。そして最後に、こう問いかけられます。
「最近、ロイに会いましたか」
ロイとは…?
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【WalkMe株式会社】AI活用を阻む、4つのフリクション
野田 亮 WalkMe株式会社 代表取締役
オープニングに登壇したWalkMe株式会社 代表取締役 野田亮は、冒頭の映像をこう読み解きました。
「ギャップとは、企業が投資したものと、実際に回収できたものの差です。つまりROI。今日私たちが探しに行くのは、AI投資のROIです。ROIはテクノロジーを買っただけでは生まれません。人が実際に使い、行動が変わり、業務の結果が伴ったときに初めて生まれるものです」
続いて野田は、2つの数字を並べます。ひとつは45兆円。2025年にグローバルのエンタープライズ企業がAIに投資した額です。日本の国家予算のおよそ4割にあたります。もうひとつは8%。エンタープライズAIを業務で有効に活用できている従業員の割合です。
この差を、野田は自身の体験としても語りました。「今年、ある講演で100人以上の方に『業務プロセスの中でAIを活用できている方は手を挙げてください』と伺ったことがあります。挙がった手はゼロでした。当社の創業者ダン・アディカがSAPのイベントで200人ほどに同じ問いかけをしたときも、挙がったのは1人だったそうです」
なぜAI活用が進まないのか。WalkMeはその原因を、現場で起きている4つのフリクションとして整理しています。
1つ目は、文脈を欠いた一般的な回答しか返ってこないこと。2つ目は、AIツールごとに異なるUIへの対応を迫られること。3つ目は、システムをまたぐAIワークフローが実行できないこと。4つ目は、何が機能しているのかを可視化できないことです。
「実際の業務は、メールで始まり、SAPで処理し、ServiceNowでチケットを切って、最後にSalesforceで記録する。複数のシステムを横断します。ところが多くのAIは、単一のシステムの中でしか動きません」
WalkMeはこの4つに対して、See(見る)、Unify(統合する)、Act(実行する)、Prove(証明する)という4つの役割で応える、と野田は説明します。「この4つが揃って初めて、AIへの投資が計測可能なROIになります」
【会場参加型クイズ】AIアダプションの実態
Keynoteの前半では、来場者が自身のスマートフォンから回答する参加型クイズが行われました。設問はすべて調査レポート「デジタルアダプションの状況2026」からの出題です。
まず「現時点で、ソフトウェアと日々の業務体験を表現するとしたら」という問いに、最も多かった回答は「ストレスフル」で49%。会場の実感が、そのまま画面に映し出されました。
続く設問では、デジタル摩擦によって従業員1人が1年間に失う労働日数が問われます。正解は51日。およそ10週分にあたり、前年から増加して過去3年で最も高い水準です。
3問目は、重要度の高い業務でAIを信頼できると回答した従業員の割合。正解は9%で、7割以上の来場者がこれを正しく選びました。
「先ほど、AIを業務で有効活用できている従業員は8%だとお話ししました。これは別々の調査の別々の数字です。ただ、並べてみると同じことを言っている。使えていないのではなく、信じられていない。ここに問題の本質があるのかもしれません」
最後の設問は、デジタルトランスフォーメーション投資のうち、アダプション不足が原因で期待した成果を下回った割合。会場で最も多かった回答は50%でしたが、正解は40%でした。
「この40%は、取り戻せます。新しく何かを買う話ではありません。すでに導入しているものを、使える状態にするということです」
デジタルアダプションの状況2026をいますぐダウンロード
【WalkMe Ltd.】従来のUIとAIエージェントが並走する時代へ
Scott Little WalkMe Ltd. 最高レベニュー責任者(CRO)
続いて登壇したWalkMe Ltd. CROのスコット・リトルは、AIの道のりを3つの時間軸で提示しました。既存のUIの上でAIエージェントを使う「Now (現在)」。従来型のUIとAIエンゲージメントレイヤーが並行して動く「Near Term (近い将来)」。そして従来型のUIが消え、必要なときにだけ画面が現れる「Vision (将来像)」です。
スコットが最も強調したのは、Near Term (近い将来)が長いということでした。「1年や2年ではありません。5年かもしれないし、7年かもしれない。環境によっては10年かもしれない。Visionは誰もが向かいたい方向として描けますが、現実的な見通しとしては、Near Termの環境が長く続きます」
その期間に立ちはだかるのが、接続性の問題です。エージェントが人に代わって処理を実行するにはAPIが必要ですが、APIで到達できる既存アプリケーションは29%にとどまるという調査結果を紹介しました。
「では、どうするのか。私たちは既存のUIそのものを、ユニバーサルな接続レイヤーとして使います」
その仕組みが、UIネイティブエージェントです。スコットは、他社のブラウザ操作型エージェントが画面のスクリーンショットをクラウドに送って処理するのに対し、WalkMeは独自技術のDeepUIによってフロントエンドのコードの階層で動作すると説明。セキュリティとプライバシーの観点での違いを強調しました。
実際の成果も紹介されました。あるエコテック企業ではAI導入に関する問い合わせが36%減少。大手ユーティリティ企業ではMicrosoft Copilotの利用率が全従業員で67%向上。グローバルなジュエリー小売企業では、AIのメールアシスタントの利用率がわずか2週間で80%向上したといいます。
「WalkMeがお手伝いするのは、皆様が行ったAI投資が実際に使われること。そして、その投資から測定可能なROIが得られることです」
【SAPジャパン株式会社】自律型エンタープライズと、WalkMeが担う役割
堀川 嘉朗 氏 SAPジャパン株式会社 代表取締役社長
セッションの後半は、SAPジャパン株式会社 代表取締役社長 堀川嘉朗氏を迎えた対談セッションです。野田が聞き手を務めました。
SAPが掲げる「自律型エンタープライズ」とは何か。堀川氏はこう語ります。「AIが人の業務を支援するだけではありません。AIそのものが企業の中で生まれているデータや業務を理解し、判断する材料を提示する。そして人が判断した結果を、AIエージェントが実行していく。そういった姿を目指しています」
さらに、その世界は1社の中で完結しないと続けます。会場では、サプライチェーンをまたぐデモが上映されました。輸送中の貨物船が台風の影響を受けると予測され、AIが3つの代替輸送案と、それぞれのビジネスインパクトを算出。荷主側の担当者が案を選ぶと、複数のエージェントが輸送手配から通関申告までを実行していきます。
「人の業務をAIが置き換えてなくすのではありません。適材適所で、人が判断する材料を、業務を理解したJouleがデータを駆使して提示する。その結果を、企業をまたいだAIエージェント同士が連携して実行していく。そこまでを目指すのが、自律型エンタープライズの姿です」
野田が、SAPの最高AI責任者の言葉を引きます。「WalkMeは、あらゆるアプリケーションやワークフローにおいて、Jouleの目、腕、足となります。」
この言葉をどう受け止めているか問われた堀川氏は、日本企業が抱える構造に踏み込みました。「SAPだけで運営している会社は、ほぼないと思います。システムを横断し、業務を横断するとき、これまではどのアプリケーションを操作すべきかを人が考えていました。まさに目です。操作して、その結果を見て次の判断を出す。そこはどうしても人に委ねられていました」
「日本企業は現場改善に代表されるように、一人ひとりが業務をどう変えていくかを日々積み上げてこられました。ただ、その積み上げが全社視点で見ると別々のシステムに分かれていて、連携にはまた人の力が必要になる。AIを起点にした時代になると、データが命になります。だからこそ、この差が大きく効いてくるのではないかと考えています」
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