近代日本の発展の過程で商社として大きな役割を果たしてきたニチメン株式会社と日商岩井株式会社の両社が、2003年4月に持ち株会社を設立し、翌2004年4月に合併して誕生した双日株式会社。2030年の目指す姿として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げ、持続的な価値創造の実践に取り組む同社は、総合商社として「必要なモノ・サービスを必要なところに届ける」という使命を果たしつつ、マーケットニーズや社会課題に対する解決策を提案し、競争優位や成長を追求していくために、事業モデルや人材、業務プロセスの変革を図っている。
2021年4月に始動した「中期経営計画2023」の中でも、デジタルを活用した新たなビジネスモデルの創造や既存事業の変革による価値創造を掲げており、そのための重要な手段の一つに位置づけられるのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)だ。DXの最終責任者・実行者である社長を委員長に据え、全社DXの推進の進捗・効果検証結果を共有する委員会を設置したほか、社内外のデータやデジタル技術を利活用することでビジネスモデルや業務プロセスの変革を実践できる「デジタル人材」の育成を通じて、全社的なリテラシーの底上げにも取り組んでいる。
ユーザーの働き方に直結する組織として全社的なITインフラ整備や情報利活用の取り組み、情報セキュリティへの制度面・技術面の対応を担う総務・IT業務部では、2020年から文書電子化プロジェクトを推進。その一環として、紙で回章していた会計伝票の電子化に向けて伝票回付システムの導入を進めていた。想定されるユーザー数は約2,000名。紙業務から電子システム業務への移行に伴い、ユーザーに混乱を与えないためには、システム操作マニュアルを作り込み、ユーザー教育のための集合研修を行うのが一般的であるが、コロナ禍で思うようにそれが出来ない現状もあった。双日株式会社 総務・IT業務部 部長 並 真樹也氏は、「リモートワーク下でユーザーの生産性と業務価値の向上を支える環境を整備するとなると、いかに現場完結で物事を進められるかが重要になります。それが結果的に企業成長につながる働き方の実現につながっていきます」と語る。
しかし、対象ユーザーが多いと全員を網羅するのが難しく、導入前のトレーニングに時間がかかる上に、導入日が近づかないと新システムへの切り替えを意識してもらえない悩みもある。さらに、「いざ導入してもなかなか定着しない問題もあり、結果的に問い合わせが増え、サポートデスクは対応に追われることになります。単に運用側の負荷が増えるというだけでなく、教育コストやサポートコストも軽視できません」と、事業IT基盤統括課 課長 古賀 秀和氏は強調する。